トッド・ラングレン&ユートピア『Disco Jets』

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76年リリース予定だったユートピアのお蔵入りアルバム。これが世に出るとは思っていませんでした。時期的には『Faithful』の後、カシム・サルトン加入前ということで音はその頃のテイストです。3曲目の『The Warp』の始まり方はビートルズカバーの『Rain』を彷彿とさせる音色で「おっ」と思わせますが、基本はインストアルバムでマニア以外には響かないアルバムでしょう。音はキラキラしていて、ユートピアでいえば『Another Live』の延長線上にある感じです。トッド関連を全部聴いている人であれば自然に耳になじんでくる「あの頃」の音ではあります。

完全な企画ものでリリースが見送られたのも宜なるかな。『Star Trek』はアメリカ横断ウルトラクイズのテーマ曲じゃないですか。これってこの頃の曲なんですね。勿論カバーですが。基本ほのぼのとしていて耳に柔らかく響くシンセサイザーの音。録音中はメンバーは大はしゃぎだったようですが、まあこりゃ売れんわな。その後ユートピアは『RA』、トッドは『ミンクホロウの世捨て人』という各々名盤をリリースしていくので、いわゆる「前夜もの」として楽しむのが筋でしょう。

『Initiation』のB面も前面インストでしたが、その頃よりも音がポップになっているので基本的には結構楽しめます。ただ収録時間が33分と短いのであっという間に終わってしまいますが、これは『ミンクホロウ~』もそんな感じなので似たような感触です。いわゆる3分間ポップスに凝ってたんですかね。『RA』は大作主義だからそんなこともないかな。この辺を思いつきですぐ録音してリリースしてしまおうとするわがままぶり。さすが天才はやることが違います。とにかく世に出てよかった。当時の音が好きな人には押さえておいて損はないアルバムだと思います。