矢野顕子『東京は夜の7時』

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79年リリースのライブ盤。先日聴いた『ごはんができたよ』の前作にあたり、『イエロー・マジック・オーケストラ』と『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』の間に位置するアルバムでもあります。YMOメンバーや山下達郎吉田美奈子という豪華メンツが揃ったあり得ない編成でのライブということで気合いを入れて聴きました。でも肩すかしをくらうようなラフな演奏で、とても楽しそうなライブですね。

丁度先日WOWOW野宮真貴の30周年記念ライブをやっていました。『東京は夜の7時』というと今ではピチカート・ファイヴの印象が強いですが、元々はこちらが本家。その割に原曲はふわっとした曲でこちらも肩すかしでした。その後のメンバーの活躍が必要以上に本作の評価を上げているんだと思いますが、端的に楽しそうなのがいいですね。たまに入るメンバーの声なんかがとても微笑ましいです。

ブレイク前夜、世間の狂騒に巻き込まれる前の一瞬のオアシス、といいますか。とても楽しそうです。実際山下達郎がゲストに来た坂本龍一サウンドストリートでも楽しそうに話す二人の会話はこの頃のエピソードも多く語られて、本当に日本のポップス黎明期の、というよりある意味学生時代の頃のような皆で仲良く気楽に楽しく音楽をやっていた時期の記録であり、音楽を音楽として純粋に楽しく演奏してそれを披露してという平和な頃の記憶を呼び起こす作品です。ラストでのメンバー紹介とソロまわしが有名ですが、この辺で止まっていたらどんなにか皆幸せだったろうにと思ってしまいますね。メディア戦略に導かれて時代が彼等に追いつき、あっという間に皆有名人、という強烈な80年代に突入する前の穏やかな記録。そんな風に楽しむアルバムだと思います。