御大がビートクラブに出演した際のフル映像がDVD化されました。目出たいですねえ。
時は72年。『スポットライト・キッド』発表後のツアー時にドイツを訪れた際の演奏です。放送では『I'm Gonna Booglarize You Baby』1曲だけでしたが、ここでは『Click Clack』や『Steal Softly Thru The Snow』なんかも聴けます。1曲だけでも強烈なオーラを放っているので、フルでしかも途中で演奏を止める様子まで含めた映像を観ると、感動というより怖さを感じます。本編でもマイクの音が今ひとつのようなジェスチャーがありましたが、これって御大の声が最初低くて途中でデカくなるからPAが追いつかないだけじゃないの?等と思いつつ観ていました。
それにしてもこの混沌とした音が何度演奏しても再現できているというのは恐ろしい。実はバンドが練習しまくって混沌を表現しているというのがよく分かります。ラフなようでいて実は一定している。御大の自動筆記みたいなアイディアを音に昇華させていったのはやはりバンドの力なんだということを再認識します。でもやっぱり途中でついて行けなくなるんですよね。そりゃ当たり前ですよ。
こうしたカリスマ的な、超独善的ともいえるアーティストが周囲との折り合いに苦労するのはよく分かります。JBだってザッパだってジョージ・クリントンだってそう。だからバンドメンバーが安定しない。でもフロントマンの名は世に残っていく。一体幸せとは何だろう、等とつい考えてしまいます。自分の世界を表現するために仲間が必要なのは言うまでもないですが、ひとりの人間としては軋轢も生むし周囲は大変なんだろうと思います。それでもアーティストというのはそうした友愛を投げ打って、というより若いうちはまったく気にせずに邁進していく。そして寂しい晩年を送る。作品だけが残っていく訳です。カッコいいんだけど哀しい。最近はそんな風に思ってきました。