筋肉少女帯とPOLYSICSに尽きますね、今年は。
行ってきましたWORLD HAPPINESS。これで初回から8年連続です。例によってとても疲れましたが、例年より多少混雑度合が少なかったのと、会社の先輩と一緒に観ることができたので、その点でも楽しめました。内容の方は文句なしのパフォーマンスがいくつか観れた反面、課題も散見されています。
筋肉少女帯のパフォーマンスは素晴らしかった。事前からアウェイ感を表明していて、かつ自分自身も失礼ながら前半は喫煙タイムできちんと観ていなかったんですが、大槻ケンジの流麗なトークと余りの演奏力に引っ張られるように席に戻ると、それからは圧倒的。とにかく演奏を楽しんでいる様子がヒシヒシと伝わってきました。恐らくは定番であろう楽曲のお約束を観客に指導しながら、とにかく演奏が抜群です。ナゴム時代のライディーンのカバーも封印を解き、高橋幸宏に懺悔しながら自らを解放していく。印象的だったのはサイドギターの方がニコニコしながらピックを投げたりペットボトルの水を撒いたりしていたシーンです。スタッフの方が一生懸命拭いていましたが・・。
ラス前は過去にもレキシやサカナクション、古くは東京ブラボーやプラスティックス等、毎回キラーコンテンツを配してきますが、今回のPOLYSICSも大当たり。初めてまともに観ましたが、こちらも演奏力が確か。ディーヴォ風の風貌なのでニューウェーヴ系かと思っていましたがほぼパンク。しかも演奏力の高いパンクです。切れ味が物凄い。そしてこちらも出演できたことへの感謝の念と、演奏そのものを楽しんでいる様子が伝わってきました。いくつかやはりお約束があるようでしたが、それを知らなくとも会場を持っていくだけの勢いと混沌を制御する確かなテクニックでグイグイと引っ張っていきます。演奏力が高いのがやはりキーポイントですね。それにしてもあれだけ動いてもメガネがびくともしないのは不思議です。
今回はサブステージに大物が多く出演しましたが、前半で感動したのは野宮真貴。ピチカート・ファイヴや小沢健二のカバーも光りましたが、何といってもラストの「メッセージ・ソング」です。これには涙が出そうになりました。野宮真貴は自らのアイデンティティとして渋谷系を継承し再現していますが、今回パートナーとしてカジヒデキを選ぶことで活動を増幅させている。90年代の再現という現在ではまだマイノリティの流れを淡々と着実にこなしている姿はとても美しく映りました。かつてのパートナーである小西康陽が自身の内面に深く埋没して内省モードに入っているのに反して、あくまで明るく開かれたものとして渋谷系を啓蒙していく様は予想に反してとてもナチュラルに見えました。
土屋昌巳のバンドは元祖ビジュアル系という感じでこちらも演奏力が確か。先輩もギターの音の良さに感心していましたが、バンドとしては失礼ながらキャラクターが炎天下にアンマッチでかなり笑えました。鈴木慶一のバンドも結成当初の演奏よりは大分こなれてきていて、特に矢部浩志のドラムは相変わらず渋くて素晴らしかった。ただ、こうしたベテランの演奏を先の轟音バンドが見事に裏返してしまっている。先達への愛情が反転して突進力に昇華しているので、ベテランの演奏が霞んでしまうという事態に陥っていたのは残念というよりも時の流れなんでしょう。
クラムボンは期待通りの異空間を僅か3人の演奏で作り上げていました。熱狂的なファンもいて、あくまで自然体にかつ一生懸命に演奏する姿は、当日の衣装とも相俟ってまるで神々が降臨したかのようでした。ただ、先輩が指摘していましたが音のバランスがどうだったのか。今回結構前の方で観ることができたのでそれも原因かもしれませんが、ベースの音が大き過ぎてピアノとのバランスがとれずに音が外れているように聴こえる瞬間があった。唯一これは勿体なかったと思います。
実は結構ヤバいなと思ったのは意外にも高橋幸宏のドラムです。音は大きくて演奏力も勿論抜群なんですが、ミスショットが目立った。端的に機材トラブルのようにも見受けられない感じがしたんですね。これってもしかしたら体力的な限界なんじゃないだろうか、と思うと非常に悲しくなってしまいます。グルーヴも若干後乗りでもたついている感もあり、折角の尊敬の念を受けて集結したアーティスト達のお手本に少なくとも演奏面ではなり得ていなかった瞬間を披露してしまっていた。この場でのYMOは完璧でなければいけない。そこが辛いところですが、一翼、二翼と欠いた現状ではたとえMETAFIVEで優秀な後輩達を配して過去の名曲をリメイクしても、観衆の期待するカリスマを単独では発信できない。実は最後のアンコールも観客の一部からは「アンコールいらないよなあ」といった発言も出ていました。誠に失礼ながら自分も同じく盛り上がりに欠けるステージだったと捉えています。METAFIVEとしての新作の告知や複雑で正確な演奏等、勿論観るべきものは沢山ありました。がしかし、ある種の限界もそこには見え隠れしている。シーン全体を牽引していくには一人ではきつい。細野晴臣、坂本龍一の不在をやはりそこには見てしまうんです。こうした伝説を紐づける役割が高橋幸宏にはあるので当然不可欠な存在なんですが、その要素自体を欠いてしまってはやはりオーラが成り立たない。孤軍奮闘は自らを消耗してしまうので年齢的にも回避すべきです。
つい苦言を呈してしまいましたが、とても心配なので大きなお世話とは思いつつ書き連ねてしまいました。残り僅かな時間を伝説に変えるステージがこの場には用意されていく、恐らくWORLD HAPPINESSはそんな役割が与えられていると思うので、是非踏ん張って頂きたいと思います。心から応援しています。