鈴木慶一とムーンライダース『火の玉ボーイ40周年記念デラックス・エディション』

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昨年末リリースされた『火の玉ボーイ』のデラックス・エディションは値段も張ることから手を伸ばすのを若干躊躇していましたが、運良く未開封品が中古で手に入ったので改めてじっくりと味わうことが出来ました。ムーンライダーズがまだムーンライダー「ス」だった頃の作品、というよりもそもそもは鈴木慶一のソロ作品として制作されたアルバムですが、実は左程頻繁に聴いてはいなかったのが実状です。何故なんだろう。

初期のムーンライダーズの良さに気付いたのが大分遅かったこともありますが、やはりこの1stだけは別種の音が鳴っているような気がして、何となくライダーズ作品として耳に馴染まなかったのかもしれません。特に後半の無国籍志向が混沌としていて入り込めなかった。

でもやっぱり冒頭の「あの娘のラブレター」はいい曲だし、続く「スカンピン」も名曲だと思います。後半の混沌は今でははちみつぱいからムーンライダーズへ移行する過渡期の音として貴重な記録だし、何より歌と演奏の早熟さが半端ではありません。今回発掘された新宿ロフトでのライブ音源でもその成熟度合は圧倒的で、このライブでの完成度を含めて本当にこの作品は金字塔となって世の中に記録された。そんな風に感じます。

本編を聴いていて思ったのは「こんなにエコーが効いてたかなあ」ということ。ボーナストラックでは「酔いどれダンスミュージック」のニューオーリンズ風なタイトな演奏が圧倒的にカッコいい。この曲は演奏時期によって印象をガラリと変える多彩なバージョンのある楽曲ですが、このバージョンは『恋人が眠ったあとに唄う歌』のシングルにカップリングされた再演バージョンの次くらいにいい出来だと思います。