高橋幸宏『LIFETIME, HAPPY TIME 幸福の調子』

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心痛3部作も年内でおしまいにしておこう。92年リリース。オープニングの曲は当時CMでよく流れていた。

 

これが嫌だった。でも今聴くと表層的なイメージに振り回されていた自分を後悔。要するに薬を飲みながらどん底から復活して元気になってうれしい訳だ。そういう経緯で聴くと応援したくなる。音の感じも元気が出てきていて、決して甘ったるくはない。ジャケットでほうきをもって掃除をしているのも老成している感じがしていいですね。

なるほど『素敵な人』もタイアップ曲ですか。確かに聴いたことがある。この後少しタイアップには疲れて離れていくようだが、それは分かる気がする。大いなる世間の誤解を招くもんな。自分もそうだった。というより今回自分の場合は心痛に惹かれた訳だが・・。

この後突如YMOが再生する訳だが、その兆しはまったく感じられない。やはり『テクノドン』は坂本龍一が音のイニシアチブをとっていたんだな。このアルバムに流れている幸福感には後のヒリヒリした感触はほとんど感じられない。自分を癒しているのが伝わってくるが、それが今の時代にはむしろ合っている気がする。20年くらい早いですよ。でも最近のpupaの暖かい感覚はこの辺の活動が昇華したものとも捉えることができるのではないか。というのは言い過ぎかな?

高野寛参加曲は若干ピリッとしているし、また『しあわせになろうよ』にあるような音頭風の感覚や徳武弘文の参加によるカントリーテイストは最近の細野晴臣の作風に15年も先駆けている。ということはやはり登場人物は変わってないし、今またそのリバイバルが始まっているようにも思う。時代の感覚が幸福感を求めているんだな。

「調子が良くなってよかったね」と言いたくなるし、先日も書いた「達観」にも似た日常における小さな幸せの発見という、辛い時期を経験した上での歳をとった安定感が聴こえてくる。この感覚はHASYMOにもあった緩い再会で、それは今も綺麗な枯れ方として継続している。いつまで経ってもガキ臭いバブリーな感覚では既に時代に合わないし、そもそも昨今ビジネス面でもそうしたスタンスのサービスは成功していない。そこを踏まえた上でのリーズナブルさとブランディングが必要なんだな。もしかしたらキーワードは「HAPPINESS」かもしれない。