シリア・ポール『夢で逢えたら』

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同じく77年リリース。ナイアガラが別アーティストを扱うアルバムはもっとあってよかったはずだが、実質シュガーベイブとこれくらい。松本隆以降はっぴいえんど組が大挙歌謡曲に押し寄せてくるのは80年代まで待たなければならないが、その先駆けのようなアイドル歌謡で、しかもスペクター節爆発の怪しい音像を展開している。

単純に『夢で逢えたら』がいい曲なので、そこから入ってきたリスナーが当時どれ程いたのか知らないが、このエコーをかけまくった音に違和感を覚えなかったんだろうか。スペクターサウンド自体ポップスの王道を走った時期があるから割と自然に受け入れられたのかな。とにかく別世界で鳴っているような不思議な世界が繰り広げられている。

『恋はメレンゲ』『ドリーミング・デイ』といったナイアガラカバーやオールディーズのカバーで一見きらびやかに展開されているが、やはり音像は異常だ。異世界で鳴り響いているようなその質感はとても爽やかとは言えず、むしろ狂気を感じさせる。『こんな時』の雷雨のSEなんてオカルトでしょう。

『The Very Thought Of You』『Whispering』では御大とのデュエットが楽しめる。魔法使いとお姫様みたいなその組み合わせはシュガーベイブの2枚看板とは違って一体感を感じさせるものではない(当たり前か)が、表面上はポップスとして聴こえてくる。でも変な音だ。構えて聴き過ぎなのかもしれないが、もうちょっと汎用化してもよかったんじゃないかなあ。でもナイアガラだからこそ今でも聴き次がれているんだとは思うが。

「裏方聴き」の先駆と呼んでおきましょう。好きです。