ユートピア『POV』

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85年リリースのユートピア最終作。80年代の前半はトッド・ラングレン不遇の時代ですが、それを象徴するような作品です。楽曲的には冒頭の「Play This Game」やその後何度もライブで演奏されることになる「Mated」等を収録していて決して見逃すことはできない作品なんですが、全体的にプロダクションがチープな感が漂ってしまっています。ユートピアというバンド形態も既に限界にあって、この形態で何を表現していけばいいのか、既にトッド自身も迷いを感じていたんじゃないでしょうか。

よく言われるように、ソロとバンドでの音楽性の使い分けが初期はユートピアで実験的なことをやっていたものが徐々に逆転していってバンドの方で大衆性を求められていってしまった。その反面ソロの方が実験性を増していく、といった流れを70年代から80年代にかけて見せていくという数奇な運命を辿ります。才能が多彩なだけに活動形態が多様化するのは仕方ないですし、実際多くの作品がそれによって産み出されたことはファンにとっては喜ばしいことですが、作品自体のクオリティの維持といった側面では微妙です。でもよく続いたよなあ。

「Play This Game」を最初に聴いたのは88年のライブ時ですが、変わった曲だなあ、でもポップ、これって何のアルバムに収録されているんだろう、等と思ったことを思い出します。まさかこの作品だったとは。その後、『Nearly Human』ツアーなんかでも収録曲の再演があって、意外とライブで取り上げている曲が多いアルバムです。結局聴き逃し厳禁、ということになりますね。