今回は「幸福」がテーマですが、当時のインタビューを見ると「カントリー・テクノ」という言葉が見つかります。ポイントとなっているのは徳武弘文の参加で、時折現れるギターの音がこの作品全体の温かさを演出しています。
ジャケットから連想される小津安二郎のような世界観はまるで活動の末期を予感させるようで、この落ち着きが当時は嫌でした。しかし92年という年は水面下でYMOの再結成が蠢き始めた時期でもあるので、音を慎重に聴いていくとやはり打ち込みの割合は高い。音の質感が温かいだけで電子音楽に変わりはありません。ここは当時気が付かなかった。というより触れていませんでしたね、音に。
味の素のCM曲「元気ならうれしいね」が冒頭に収録されていて、これがもうこの作品の印象を決定づけてしまっていますが、全体的に見ていくと包まれるような大きな愛に満ちているような気がします。やっと到達した「幸福」というテーマ。そこに安住しないまま90年代をこの後駆け抜けていくというのは非常に意外な展開でした。