ハイラマズは『Gideon Gaye』から始まったものとばかり思っていましたが、実はその前に『Apricots』というミニアルバムがあって、それに楽曲を追加してフルアルバム化した本作が先に出ていた。92年のリリースだったそうです。それは知りませんでした。
初期のハイラマズはビーチ・ボーイズ、ブライアン・ウィルソンの『スマイル』期のような美しい世界観を幽玄に奏でる中で、たまにポッとポップな楽曲が挟まっているという印象だったんですが、この作品は全編にわたってポップな感じです。
普通にドラムが入っていて、アコギが鳴っている、という至極当然な振る舞いがハイラマズの場合は特殊に映ってしまうという非常に変わった位置付けのバンドですが、これはこれでとても気持ちいいし、何より佇まいが静かなのがいいですね。遠くの方に音が行ってしまうのではなく、まだ自分たちの近くにいる。そんな安心感がある作品でした。
4曲目の「Market Traders」が気に入りましたが、すでにこの曲で表現されている老成した奥行きのある音楽は、最初からハイラマズの完成度が高かったことを物語っているように思います。