ブルーレイの方も届きました。新宿に映画を観に行ってからどれくらい経ったのか忘れてしまいましたが、その際の強烈な印象はCDの音に向き合うことで既に通過して、今は映像の方では比較的気楽に楽しめています。
付属のインタビューでの「美貌の青空」の演奏失敗シーンは監督の息子さんの依頼による演技の可能性がある、という話はびっくり仰天で、だとすると少しシリアスさが半減されてむしろ映像が楽しく見えてきます。実際、この曲の演奏時には笑顔も見えていますので。
照明の演出が夜から朝、昼、そしてまた夜を表現しているというのも「なるほど」と思わせるエピソードでした。そういう目で見ると後半の演奏ではライトが月のように輝いて見えます。
必死の演奏に悲壮感が漂うように思えたのは音だけの印象で、映像が伴うと、最初はそんな風に見えても、時間を追って見ていくと意外と楽しそうに演奏している様子が伝わってきます。真剣だけれども恍惚感もあって、プロダクションとしてしっかりしていることに満足しているような感じ。あんまり悲壮感だけで語るのもご本人の本意ではないのではないかと思います。
テレビ放送の方では「戦場のメリー・クリスマス」の演奏後にご本人が手を合わせて祈るようなシーンがあって好きだったんですが、そのシーンを外したのも、もしかしたら悲壮感の排除が理由だったのかもしれません。
最後の「Opus」のエンディングシーンでご本人不在でピアノの自動演奏になるシーンはやはり何度観てもグッときてしまいますが、このあえて淡々と日常が続くかのように演奏した楽曲が長くこれからも芸術が続いていく様を象徴していて、これもまたいい演出だと思います。