カーネーション『LOVE SUITE live at 大手町三井ホール 2020.12.4』disc 2

2枚目を聴いていてやけに『Love Sculpture』からの選曲が多いなあ、と思っていたら、この時点で発売20周年なんですね。きっとそれが原因でしょう。『Love Sculpture』を余り聴き込んでこなかったので、結構新鮮にそれぞれの曲を味わうことができました。

 

ラストはアンコールも含めて「New Morning」「夜の煙突」「愛のさざなみ」の3連発でこの辺りは強力。先日の40周年ライブでも「夜の煙突」は盛り上がっていましたが、こうした楽曲を早々に手に入れることができたのはカーネーションにとって幸せなことだったんじゃないでしょうか。トッド・ラングレンのアンコール定番曲のようですね。

 

「愛のさざなみ」も大好きな曲ですが、これをラストで畳み込むのはとても粋ですね。グルーヴがうねっていて最高です。

カーネーション『LOVE SUITE live at 大手町三井ホール 2020.12.4』disc 1


カーネーションのオフィシャル・ブートレグ・シリーズはこれまで手を出さずにいましたが、ディスク・ユニオンの御茶ノ水店で店頭に置いてくれていたので今回一連の作品を聴いてみることにしました。

 

タイミング的には『Suburban Baroque』の後、『Turntable Overture』の前、ということで非常に好調な活動期間に入っていて、演奏もとても滑らか。気負いがなくていいですね。何よりこのライブは選曲がいいなあと思いました。

 

最近は結構『booby』を引っ張り出してきて聴く機会が多いんですが、ここでも大好きな「Sweet Baby」なんかを演奏してくれていてとても嬉しい。はっぴいえんどのカバー「春よ来い」まで入っています。

 

前半だけでかなり気に入りましたね。後半も楽しみです。

ムーンライダーズ『月面讃画 ムーンライダーズ・月面サマーツアー1998』


ムーンライダーズの1998年のライブ映像を入手しました。ここはミッシングリンクだったんですが、想像していたものとは少し違っていました。

 

『月面讃歌』というアルバムはムーンライダーズが一度作った楽曲を外部のミュージシャンに預けて全面的にプロデュースを委ねてしまうという形式をとった特異な作品で、楽曲ごとに大胆な編曲がなされています。当然ながら自らがアレンジした音源も存在して、それらが『dis-covered』という別作品としてリリースされているんですが、このライブ映像はその『dis-covered』のバージョンが楽しめる。ご本人たちが演奏するので当たり前ですね。

 

前半と後半はメンバーが宇宙服を着て金髪で演奏するライブで、この映像の一部がテレビで放送されていたような記憶がありますが、中盤に登場する髪を染める前のダンディなスーツ姿での演奏が極上です。別のライブ映像を挿入しているようですが、見た目はこちらの方が圧倒的にカッコいい。

 

後半に演奏される「酔いどれダンスミュージック」は当時のCDシングルのカップリング曲で収録されていたセルフカバーバージョンで、これも格別です。この『月面讃歌』の頃の音源たちは、いつかまとめてボックス化されると期待しているんですが、非常に多彩なバージョンが作られているので、聴きごたえがあります。その一端を垣間見ることができる秀逸な記録映像でした。

高橋幸宏『LIFETIME, HAPPY TIME 幸福の調子』


今回は「幸福」がテーマですが、当時のインタビューを見ると「カントリー・テクノ」という言葉が見つかります。ポイントとなっているのは徳武弘文の参加で、時折現れるギターの音がこの作品全体の温かさを演出しています。

 

ジャケットから連想される小津安二郎のような世界観はまるで活動の末期を予感させるようで、この落ち着きが当時は嫌でした。しかし92年という年は水面下でYMOの再結成が蠢き始めた時期でもあるので、音を慎重に聴いていくとやはり打ち込みの割合は高い。音の質感が温かいだけで電子音楽に変わりはありません。ここは当時気が付かなかった。というより触れていませんでしたね、音に。

 

味の素のCM曲「元気ならうれしいね」が冒頭に収録されていて、これがもうこの作品の印象を決定づけてしまっていますが、全体的に見ていくと包まれるような大きな愛に満ちているような気がします。やっと到達した「幸福」というテーマ。そこに安住しないまま90年代をこの後駆け抜けていくというのは非常に意外な展開でした。

高橋幸宏『A DAY IN THE NEXT LIFE』


月一回、高橋幸宏のリマスター再発が行われていることで、定期的に追悼できるというのは非常にありがたいことで、亡くなってからはや一年が過ぎても、その作品に丁寧に触れることができる。購入することを決断してとても良かったと思っています。

 

この作品は俗にいう「心痛3部作」のうちの2作目で、来世がテーマだそうですが、先月も書いた通り、EMI時代の高橋幸宏は一貫してビートニクスの変奏形を形作っていた。ここでも後半に鈴木慶一との作品「X'MAS DAY IN THE NEXT LIFE」と「神を忘れて、祝へよX'mas time」が収録されています。どちらもクリスマスの曲なので再発も12月だったら良かったのになあ。

 

心痛かどうかは別として、この3部作はとても完成度が高い。楽曲が粒揃いだし、メンタルの状態と反比例してとても快調な作品群だと思います。当初EMI作品をJ-Pop接近遭遇作品として回避していた頃には想像がつかなかったくらいの耳への残り方をしています。曲がいいんだな、単純に。

 

リズムについては本作に限らず何となくお祭りや音頭みたいな瞬間があって、意図せず日本的になっているような気がします。

 

91年リリース。自分が社会人になった年ですが、だからということもなく90年代から今まで一直線で社会や文化は変わっていないように思います。この不変性が顕著になるのは世紀が変わってからですが、ディケイドの特徴として90年代も既に進化は止まっていたんじゃないかなあ。

cero『e o』disc 2 『Outdoors 2002 Live at 日比谷野外大音楽堂 2022.7.16』

ボーナスディスクとして野音のライブがブルーレイ・ディスクで付属していて、コンサート1本分を丸々味わうことができます。

 

冒頭の子供の鳴き声で既に癒されてしまいますが、こうしたアクシデントを包み込んでしまうような包容力がceroにはあるような気がします。それはフロントマンの高城昌平さんに小さいお子さんがいらっしゃることとも関係していそうですね。

 

サポート・メンバーに小田朋美さんと角銅真美さんがいる時点でもう最高ですが、演奏は全体的にいい意味での浮遊感があって、かつ楽曲によってはグルーヴも立ち上がってくる。「魚の骨 鳥の羽根」あたりの複雑なグルーヴが躍動的に再現される様はとても貴重です。ceroの音楽は祝祭性が特徴的ですね。

 

天気は生憎の雨天だったようで、夜の野音に雨が降りしきる中、雨粒が照明に照らされて美しい風景を記録しています。観る方は大変だったでしょうが、パッケージで鑑賞させて頂いていると、ある意味幻想的に映ります。

cero『e o』disc 1

昨年リリースされたceroの新作もフィジカルで買い直しました。配信で聴いた中で改めて入手した作品は今のところceroとフォンテインになります。

 

最初に聴いた時には掴みどころのない音に若干困惑しましたが、この静けさと中毒性にその後もしばらく耳を引っ張られました。やはりこれはいい作品で、こうしたものは手元に置いておきたい。ジャケットもいいですよね。

 

リードトラックの「ネメシス」が耳に残ってしまって、とにかくジワジワ効いてくる。こうした後を引くトラックが沢山あるアルバムです。CDで聴くと、細かい音が幾重にも折り重なって鳴っていて、とても奥行きを感じます。

 

ファルセットとコーラス、アンビエントな音の洪水。それらが一遍に押し寄せてくる波のような音楽。聴いていてとても気分が良くなります。やはりこれは2023年の名盤でしょう。やっと追いつきました。