ムーヴ『Move』

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ムーヴの再発は過去何回か行われていますが、全65曲、3枚組という凄まじいボリュームで今回決定盤がリリースされましたので、これはもう一生モンということで手にしました。まずは68年リリースの1stです。

基本的に1枚目がモノラル、2枚目がステレオ、3枚目がBBCライブという構成ですが、聴き応えがあり過ぎです。内容的には66年の音源から収録されていますが、結成は65年。アルバムが出るまで大分時間がかかったことになります。それにしてももう50年前、半世紀経っていることになる訳で、つくづく自分も歳をとったし、ロックの歴史というものもあっと言う間にこれだけの時が流れていることに愕然とします。

ロイ・ウッドの書く曲はどれもポップで、本当に才能のある人だったんだなと痛感しますが、初期のムーヴというのはメンバー5人の内4人がボーカルをとるという豪華なグループでした。全員歌って演奏できるというのはザ・バンドや10cc、ムーンライダーズと様々なバンドが過去に存在しましたが、大抵は中で揉めてしまって長続きしない。ムーヴもその体制をアルバム毎に変えていきます。ソングライターがロイ・ウッドのみだったというのが結果的にはバンドの体制をスリム化していったんでしょうし、後のジェフ・リンの参加がバンドの発展的解散、この場合はELOへの変化を促進した。その後ロイ・ウッドはELOを離れてウィザードの結成に動いていく。本作はそれらの出発点にあたる訳ですが、既にこの時点で充分に音楽性が確立されている。

ムーヴやボンゾ・ドッグ・バンドもそうなんですが、てっきりビートルズフォロワーかと思っていましたが、少し違うんですね。むしろ大滝詠一なんかと共通点のある、エルヴィス・プレスリーなんかに影響を受けているより上の世代の人達な訳で、同時代にビートルズが出て来たことでリアルタイムに影響を受けながらも原点は異なる。その辺りが最初に聴いていた頃には分かりませんでした。

初期のライブは大分激しいパフォーマンスもあったようですが、結局は楽曲の魅力で息の長い人気を保持しているのがムーヴ、ひいてはロイ・ウッドなんだと思います。それにしても凄いボリュームでお腹一杯ですね。