伊藤銀次『デッドリイ・ドライブ』

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77年リリースの伊藤銀次1stがタワレコ限定で再発になりました。何となく目に入ってしまったのは『こぬか雨』が収録されていたからです。伊藤銀次をきちんと聴くのは初めてですが、今の季節に合うかな、と期待して注文してみました。

聴いた印象はほぼ想像通り。ナイアガラ、シュガー・ベイブ直系の「あの頃」の雰囲気です。『こぬか雨』はスローで迫ってくるいい曲ですね。この曲はシュガー・ベイブ時代のレパートリーで録音は当時されなかったようです。間奏で切れ込むように坂本龍一のピアノが入ってきます。随所に大貫妙子のコーラスも入って来て、雰囲気が出ていますね。

インスト曲も混じっていますが、この辺りはティン・パン・アレーの別系統のようで、演奏はすこぶる上手い。ただ言われているようにメロウな路線とプレーヤーとしての個性が一緒くたになっていて統一感には乏しいと思います。とはいえ散漫かというとそうでもなくて、当時の空気が全体を覆っているような気がします。

思うに鈴木茂なんかにちょっと近いんじゃないかなあ。『BAND WAGON』と『LAGOON』の間のような感じ。捉えどころのなさ、というより浮遊感。でも演奏はしっかり、といったイメージでしょうか。それにしても坂本龍一は弾きまくってますね。はちみつぱい程しっとりは行かずに、むしろバックの演奏が立っている。『風になれるなら』などを聴いているとやはりシティ・ポップスの原石を見るような気がします。う~ん、やっぱり爽やかだなあ。