ビートニクス『M.R.I.』

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先日のワールド・ハピネスでビートニクスの1曲目に演奏されたのは『Dohro Niwa』という曲でした。非常に重厚で場が締まる感じがしてとてもよかったんですが、「あれ?この曲って何だっけ?」とその場では思い出せずにいました。その後調べてみると01年リリースのこのアルバムに収録されていることが分かり、そういえばレンタルで借りただけで持ってないので、いつか機会があればと思っていたところにお盆明けの中古盤大量在庫の中にこのタイトルをみかけた、ということになります。

発売当時あまり話題になることもなく、収録曲も比較的地味で何となく印象が薄い作品ではあります。ただドノヴァンのカバーの『Wear Your Love Like Heaven』はいい出来ですし、高橋幸宏のソロにも収録されている『6 Billion Heaven』のセルフカバーもある。そして『Dohro Niwa』とそれなりに大事な曲が収録されている作品です。先日発売された高橋幸宏の新書でも収録曲の『Honolulu Lulu』のエピソードが掲載されていました。イントロは細野晴臣の『熱帯夜』をモチーフにしたそうですが、確かに似てますね。

時期的に2001年というのはスケッチ・ショウが始まる直前でもあり、ムーンライダーズも『ダイアモロンズ・トリビューン』の混沌とした世界を提示している頃、ということで、細野晴臣周辺の復活モードとは対照的に少し停滞していた時期だったんですね。その間隙を突いてリリースされたこのアルバムには、その停滞と締念が混在していて毒づいていながらもリラックスしているような感覚を覚えます。確か「21世紀になっても何も変わらないじゃないか」という怒りが発端だったという記事を読んだ記憶がありますが、その後9.11が起こる訳で、この作品はその前のステージにある。時代の変り目はすぐにはやって来なくて、ワンテンポ置いてから発生するんですね。これはその前の平和な時期に焦燥感を持って作られた作品だと思います。