Ryuichi Sakamoto Selections 『schola TV』

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スコラTVシリーズの演奏シーンのみをピックアップした映像集がリリースされました。TV放送は観ていましたが、こうして演奏シーンのみを編集して作品化するのは記録映像として親切ですね。TVシリーズは第3弾も決まっているようですので、何を選ぶか楽しみなところです。

クラッシックパートで改めて驚いたのは即興演奏の2曲です。ほんとに即興なのか、と思う程楽曲として完成されていて、まるで昨今のコンサートの一部を観ているかのようです。これほんとに即興なんですかね。だとしたら凄いなあ。あらかじめ決められていたかのように演奏を進めていく様は、元々あった作品を奏でているかのようです。それにしてもやはりラヴェルの影響は大きいんですね。ラヴェルの演奏もソロ作品のようでした。

やはりひとりで演奏しているよりはバンドでやっている曲の方がスリリングに聴こえます。ジャズパートで山下洋輔に刺激されて高揚していく演奏は何度観ても見物ですし、本人達も楽しそう。YMOでの演奏は貫禄というよりセンスが錯綜していて風景のようです。ワークショップの子供達との演奏も改めて観ると非常にカッコいい。細野晴臣のベースが自在に動いていくのを高橋幸宏のドラムがシンプルに締めていく様はやはり渋いですね。

演奏を観ていて思うのは、坂本龍一はやはり前面に出るよりも伴奏者として音を奏でる方が真価を発揮するのではないか、ということ。山下洋輔がメインでいて、そこに絡んでいく旋律であったり、細野晴臣のベースと共に全体を包んでいく感覚であったり、とサイドマンとしての音の方が耳にひっかかる気がするんですね。坂本龍一がメインで演奏していくと叙情的になってしまって、むしろソロ曲でもリズムを重ねて構築していくような曲の方がインパクトが強い気がする。気のせいかな。

最後は『ビハインド・ザ・マスク』で締められますが、まるでティン・パン・アレイのように聴こえます。ギターソロが切なく聴こえるからかもしれませんが、今回改めて聴いて70年代テイストが漂う演奏のように感じました。小山田圭吾のギターは空を飛ぶようなフレーズでいいですね。

この『スコラ』シリーズは音楽の歴史を借りた坂本龍一のルーツを探る旅のような趣がありますので、必然的に原体験が反映されていく。そうすると、少なくともバンド演奏においては70年代の雰囲気が滲み出てくるんですね。演奏者としての坂本龍一を改めて味わえる映像集だと思います。