昨年出たジム・オルークの新作は高橋幸宏のEveryday Musicでかかっていたのでずっと気になっていました。その名の通り佇まいはシンプルですが、基本は構築形のアーティストですので細部の細かさが裏側に隠れていて、高橋幸宏曰く「よく出来ている」アルバム、という印象です。
一聴して驚くのは音の小ささです。この音圧の低さは恐らく意図的でしょうが、大袈裟にならずにそっと差し出すような音楽。しかしながら表現の奥には様々な要素が折り重なっていて、単なるSSWのアルバムではない。日本で出会ったミュージシャンを使ってバンドとして音を奏でて、地味ではあるが奥行きのある音を発信する。
ジム・オルークはかつてレンタルで『ユリイカ』を聴いた記憶がありますが、その頃は音響派といわれるステレオラブやハイラマズのような電子音楽をイメージさせる世界観でした。しかしここではそうした要素は排除され、むしろジャズにも近いような簡潔なポップスが鳴っています。複雑なのに手触りは優しい、というある意味スティーリー・ダンのような音楽だと思います。