フェネスサカモト『cendre』

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先日何気なく以前のワールドハピネスの映像を観ていたらフェネスサカモトの音が流れてきて、意外といいなあ、と思って探してみた一枚。坂本龍一とクリスチャン・フェネスのユニットによる07年の作品です。

 

坂本龍一のこうしたコラボ作品は大抵環境音楽的なものが多いのでずっと手を伸ばさずにいましたが、このフェネスサカモトについては音を聴く限り結構ちゃんとピアノを弾いていて、かつどことなく穏やかで明るい感じがしたので、心地良く聴くことができました。ワールドハピネスも当時会場で観ていましたが、暑い中での一服の清涼剤のような音だったと記憶しています。

 

07年という年は、坂本龍一でいえば04年の『CHASM』と09年の『out of noise』の間、YMOでいえばHASYMOとして復活して『RYDEEN 79/07』をリリースして復活し始めた年にあたります。08年のロンドン/ヒホンでのツアーでクリスチャン・フェネスが同行していますので、この頃は特に活動を共にすることが多かったんでしょう。 

 

時期的にはエレクトロニカと「音」の音楽の間にあたる時期。従って、本作のようなノイズ+ピアノといった構成はごく自然の成り行きです。それで聴いていてどうか、という話ですが、落ち着いて時が流れていく感覚はあるものの、やはり聴き込むものでもない、という印象です。現代音楽みたいな耳に厳しい暴力性がない分、安心して身を委ねることができる快適な音楽、というよりやっぱり「音」。今世紀に入ってからの坂本龍一の音楽はこうした「音」を紡いでいくものだったんだな、と後で振り返ることができるんじゃないかと思います。