Prince『サイン・オブ・ザ・タイムズ』

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87年作のこの2枚組は、絶好調のこの時期のプリンスで唯一手が伸びなかったアルバムだった。一時期、プリンスの革新性に気付いて、一連のアルバムをひたすら借りて聴いた際、一番地味な印象があったからだ。このアルバムは『Starfish And Coffee』のためだけにあると思っていた。

ただ、タイトル曲のPVは当時異彩を放っていたし、各方面で名盤として語られるのを目にして、自分の耳はまだそこに追いついていないのかと考えつつ、ずっと気になっていたアルバムだった。ということで改めて手に取ってみたが、相変わらずダイレクトな魅力は伝わってこない。ポコポコしたドラムが原因なのか、2枚組のボリューム感がそうさせるのかは分からないが、理解するまでに時間がかかるアルバムなんだろう。

『Starfish And Coffee』は相変わらずカッコ良くて、以前に高橋幸宏が「メジャーでありながらこれほど革新的な曲を作るのは珍しい」と紹介していたのを思い出す。

とはいえ、以前に聴いた時よりは大分分かるようにはなってきた。これを今の音で構築したら、さぞかし鋭角的な曲になるんだろうと思わせる独特のリズム感覚と、クールながらもバラエティに富んだ曲群が、聴く側の掘り起こしを待っている気がする。