鈴木博文『凹凸』

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08年に出た鈴木博文の久々の新作は何となくやり過ごしていた。既に10作目を数えるという。実は『からす』以来、その朴訥とした真面目さ(暗さ?)に引けてしまって余り手が伸びずにいた。でも今回は意欲作のようだし、その後のムーンライダーズの好調も後押しして手に取った。『三日月の翼』はいい曲だったしね。

ということで聴いてみると、印象は余り変わらない。確かに音はアグレッシブなんだが、本質が当然ながら変わらないので、響いてくるのは詩人のような音だ。そんな中でも『やわらかい戦慄』なんかは比較的弾けていていい曲だ。『自由な老兵』も引っかかるところがある曲。

鈴木博文は基本的に詩が素晴らしいので作詞家としての側面がクローズアップされがちだが、初期のソロ作品やムーンライダーズへの提供曲等でもメロディが際立つ曲も多い。さりげないところが魅力のように思うので、余り構えて大作に挑まない方がいい味が出る。寸止めの魅力といったところか。

1stのラスト曲『Early Morning Dead』がこれまででベストだと思うが、こうした呟きのような曲と思いっきりゲストを沢山招いて世界観を広げるような曲がバランスよく同居していたりするともう一段上へ行くような気がする。閉じているのが勿体ない人なんだ。