サディスティック・ミカ・バンド『黒船』

f:id:tyunne:20181021121430j:plain

CDプレーヤーの音飛びが激しくて聴けたもんじゃない。はやく修理しないとなあ・・。74年リリース。実はミカバンドをちゃんと聴くのは初めてだ。何となく加藤和彦関係は避けて通ってきたが、『嘉永6年~』をどこかで耳にして、いつかは聴かないとと思っていたところに中古屋で未開封品が安めで置いてあったので思わず手にした。

有名な『タイムマシンにお願い』はいいとして、導入部からフュージョンっぽいんですね。件の『嘉永6年』シリーズは組曲みたいになっていて、演奏力の確かさを雄弁に物語る。うまいなあドラム。『よろしくどうぞ』『どんたく』みたいな日本を売り込むような姿勢が鼻につくが、この辺のセンスが細野晴臣と違うところだ。無理矢理世界にアピールする感じが好きになれない。もっと自然でいいんだよなあ、というのを70年代初頭に求めるのは酷かもしれない。でもこれをやるなら大滝詠一みたいに思いっきりドメスティックでいいんじゃないかと思う。この辺の無理が反転してヨーロッパ志向になるのは宜なるかな

それにしても加藤和彦は何故自ら命を絶ってしまったんだろうか。現代の音楽事情に対する不満から、みたいな言われようがされていたが本当にそうなのか。そのあたりをソロ作品を聴いて確認してみたいと思っている。鬱病は怖いなあ。

で、『塀までひとっとび』。このファンキーさはやはり尋常ではない。さぞかしライブは凄かったんだろうと思わせる物凄いリズムの洪水。確実にピークを迎えている人達の演奏という気がする。詩の世界には共感できないが、演奏力の確かさは同時代のバンドから群を抜いていたんじゃないだろうか。漂う感覚ははっぴいえんど、ティン・パン・アレイ系と異なり多分に洋楽的だ。かつそこには日本がない。あるのは表層だけだ。ミカバンドの真骨頂は演奏力にあると再確認した。なので印象が軽いんだな。それがこれまで手にしなかった理由なんじゃないかと思う。