カーネーション『UTOPIA』

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来るべきニュー・アルバムに先駆けてリリースされたミニ・アルバム。『UTOPIA』という名称からトッド・ラングレンへのオマージュかと思いきや、意味合いは異なって震災後の様々な思いを込めた作品となっていた。

ゲスト陣が豪華。山本精一がギターを弾き、武川雅寛がトランペット・バイオリンを(このバイオリンがいい!)、梅津和時がサックスを、盟友ブラウン・ノーズとの共演ライブと引っ切りなし。かつメンバーの太田譲がボーカルをとる曲まである。もしこの体制が続いたらカーネーションは日本のスティーリー・ダンみたいになるかもしれない。

但し曲はどうか。初めてFMでタイトル曲を聴いた時の若干の違和感はここでも拭えなかった。2ピースになってからのカーネーションは中原由貴を従えてここまで爆走してきたが、震災を経てかなりの精神的ショックを受けたと思しき影響が何とはなしに全体に漂っているように思う。妙な明るさがあるんだ。端的にタイトル曲のメロディの問題かもしれないが以前のような疾走感はもうなく、むしろ思索的になってきているように感じられる。これを聴いていると邪念が頭をかすめて没頭できない。ということは曲が弱いのでは?と疑ってしまう訳だ。直枝政広はナイーヴな人だから音楽に直接的に影響が出てしまうんだろう。全力で作曲にあたっていることはよく分かるがテイストが異なってきている。ある意味今の時代を切り取る正常進化ともとれなくもないが・・。

無防備に諸手をあげて賞賛できない不安定さを抱えたプレ・メッセージ。そんな風に捉えた。