細野晴臣のトロピカル3部作のラストを飾るYMO序章の78年作品。ここでの締念はとてもロマンチックで、ここではないどこかへ逃れたいというパラダイス願望がとても素敵な形で音になっています。
「ファム・ファタール」で初めて坂本龍一と高橋幸宏との3人でスタジオ録音を行ったという話は最早有名なエピソードですが、この後の試行錯誤の上、YMOはテクノポップとして新たなフィールドに旅立っていきます。しかし、ここで聴こえる音はまだそこまで行ってはいない。とてつもなく無国籍でアジアテイストな雰囲気が漂います。
『泰安洋行』にあったような沸点ギリギリの覚醒感はここにはなく、もっと達観したような落ち着きと、そのままどこかへ消えかねない恐ろしさを内包した音が鳴っているので、とっつきやすさはある反面物足りなさも残ります。じかしジワリと効いてくる旨味のようなものがそこかしこに点在していて、病み付きになることは必定です。