コーネリアス『Ripple Waves』

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コーネリアスが活動再開したことは誠に喜ばしい限りで、こうした後日談のような作品もおまけでリリースしてくれるのは大変嬉しいことです。純粋な新作というより、スタジオライブや他人のリミックスなどを収録したオムニバス盤。一部新曲も入っているという構成です。

コーネリアス砂原良徳の作品には時代を映す鏡のような、比較的近い未来の予兆を指し示してくれるような、そんな感覚があるんですが、コーネリアスの一連の新作で示されたのは静謐さだけではない喧騒でした。それは決してクールなものだけではなくて、少し温かみも混じっていて、決して未来を絶望していない。こうした楽天的な振る舞いは前向きで好きです。

でもって音が多くなって来ている。引き算だけではない厚み、とでもいいましょうか、畳み掛ける音の厚さがあるんですね。これは自然に発露しているんだと思いますが、環境に共鳴して出て来ている音なのでなかなかに見過ごせません。

この辺の感覚は砂原良徳が『liminal』で提示した音にも感じましたので、10年代を通して少しずつ続いて来た傾向なんだろうと思います。抑制されているんだけれども、その中で暴れている。可能な限りのラウドな音がまるで収まりきれないとでもいうように発射されている。これは希望なのか、それとも諦念か。

答えなんてありませんので考えても仕方のないことですが、やはりここは「希望」ととりたい。これから1年、2年は次のディケイドの兆しを見極める年なので、何かしらのヒントが出て来ます。見逃さないようにしないといけませんね。