細野晴臣『オムニ・サイトシーイング』

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89年リリースの作品が再発されました。今回も砂原良徳のリマスターです。ここが大きい。

 

この作品は非常に様々な要素が詰まったアルバムで、最初は「江差追分」から始まってアラブ音楽やアンビエントの要素なども散らつかせつつ名曲の「プリオシーヌ」で終わる。

 

当時よく言われていたワールド・ミュージックという用語で括ってしまうと少し内容を見誤るような感じもありますが、湾岸戦争前のアラブ音楽がパリに入り込んできた混沌をキャッチして、かつこれから入っていく静かなアンビエントの海の世界にも片足を突っ込んでいる。そんなアルバムです。

 

3曲目の「オルゴン・ボックス」がとにかく好きで、このクールなテクノ・ファンクは永遠だと思っています。何度聴いてもカッコいい。加えて当時CMにも使われた「アンダドゥーラ」とラストの「プリオシーヌ」でもう名作決定、という感じなんですが、今回のリマスターでは上級編の中盤各曲が印象に残りました。

 

音の粒立ちがとにかく良いので楽曲が再度命を与えられたように立ち上がってくるんですが、「オヘンロ・サン」なんかは『フィルハーモニー』の「お誕生会」のような生活音の生々しさが味わえますし、後の2017年のアルバム『Vu Ja De』で歌詞付きでセルフカバーされる「レトルト」なんかも情緒的。アルバム全体が意志を持ってこちらに迫ってくる感じがします。

 

ジャケットも美しくて、これはアナログで手にした人はきっと見惚れていることでしょう。自分はCDですが、それでも綺麗だなあと見入ってしまうので、大きければ尚更だと思います。贅沢な時代となりました。