KIRINJI『Steppin' Out』


KIRINJIの新作もリリースされました。これはなかなかの充実作です。

 

何よりポジティブなのがいい。コロナが明けつつあるこの時期に、前向きに外へ発信するエネルギーのようなものが感じられます。タイトルは元々は『素敵な予感』にしようと思っていたそうですが、それが楽曲の前向きな感じを象徴していると思います。

 

ここ最近のKIRINJIの作風は、最新型アジアン・ポップス、みたいな雰囲気があって、若干難解な雰囲気も漂っていたんですが、この新作ではその傾向を踏まえつつも、従来持っていた70年代の音楽傾向が戻ってきていて、非常にいいバランスの音楽に昇華しています。

 

ギルバート・オサリバンの名前があがったり、スティーリー・ダン的な複雑なインストが入っていたり、曲によっては兄弟時代の作風を彷彿とさせたり。でもあくまで振る舞いは現代風、という絶妙な作風。ポップスとしての明るさ、説得力もあって、非常に外向きな作品です。いい進化の仕方をまたもや成し遂げた感じがします。繰り返し聴きたいと思わせる複雑さを内包しているのもいいですね。