ジョニ・ミッチェル『逃避行』

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76年リリース8作目。このアルバムがジョニ・ミッチェルの中で一番安定しているかもしれない。ジャコ・パストリアスが初めて参加したアルバムということもあるが、何より自分には体の一部のようになっている。ほんとに『コヨーテ』はよく聴いた。

改めて聴いてみるとこのアルバムの曲にはドラムがほとんど入っていない。キリンジ兄も『Black Crow』をかけながら驚いたとコメントしていたっけ。件のコヨーテはほぼジャコと二人で演奏しているようなもの。リズムはパーカッションのみで、ジョニのギターとジャコのベースの双方が歌っている。何といってもこの歌うフレットレス・ベースが耳を捕らえるが、この辺は次のアルバムで決定的に起用されるのでそこで触れましょう。

基本落ち着いた曲が多い中、必殺の名曲が『ブルー・モーテル・ルーム』だ。この気怠さに気付いて何度も何度も聴いたのは既に25年以上も前のことか。何てことだ。この時間感覚といったら。カッコいいんですよ、ほんとに。

今回の再発で聴こえてきたのは各曲のエンディングでの音たち。おおっ、こんな音が入っていたのか、と驚かされる。これは旧譜ではフェイドアウトで聴き取れなかった。と、そんなことはよくて、全体に漂う浮遊感と圧倒的な落ち着き。黙っていると通り過ぎてしまうような完成度を誇っているが、聴いていると不思議と体に栄養が染み込んでいくように一体化してくる。ジョニ・ミッチェルで1枚と言われたらこれか次作をやはり選んでしまうだろう。それ位記憶にインプットされているアルバムです。