プリンス『Diamonds And Pearls』

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さて日常に戻ってプリンスの91年作。このアルバムは何故か持ってなかったので中古でド安めで購入。プリンスは比較的歯抜けが多いが、この前に出ている『グラフィティ・ブリッジ』が結構好きなのと、タイトル曲は何度も耳にしていたので手に取ってみた。印象は至って普通。

そもそもプリンスの快進撃が陰りを見せ始めた頃で、今ではまったく同じ印象のアルバムを一定のクオリティを維持しながら量産し続けている。リリース・メディアに対するあくなき挑戦を続けている印象はあるが音楽的には非常に真っ当で、裏切りがいい意味でも悪い意味でもない。ここで聴けるのもそうした真っ当路線の音だ。多少のジャズ趣味があったりはするが、モコッとした音色が今と左程変わらない。ということはここから20年変わってないわけか。そいつも凄いな。色々あったんでしょうが。

何より経済的打撃というのが結構アーティストの活動には大きな影響を及ぼす。トッド・ラングレンだって小沢健二だってそうだ。やはり金がなければ活動は出来ないし、そいつは企業も同じだ。生活が破滅して活動が止まってしまっては元も子もないし、ファン側もそれは望んでいない(ともいえないかな)。人生を賭けて刺激的な領域に取り組むのも美しいがそのバランスが大事でその絶妙さがムーンライダーズのような大いなる継続性を生む。特に一度売れてしまったらやはりある程度の波は活動に影を落としてしまうだろう。かといってマイケルみたいに死んじゃうことはないんだから。それにしてもちょっと凡庸だな。

実はこの後に出る『COME』なんかが結構好きだったりするんですよね。『ゴールド・エクスペリエンス』も意外と攻めてていいし、ワーナーとの確執に終止符を打つ3枚組もなかなかいい訳で。そうして見るとやっぱり超過渡期と捉えてもよさそうだ。悪くないけどね。当時は時流の先端から外れたという印象だったようだが。妙な落ち着きを見せる、それでも65分もある大作。確かに10曲目以降はいい気分で聴ける。