キンクス『パーシー』

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ここのところブラタモリがまた放送されているので観ているが、なかなか面白い。職業柄地図には関連が深いのもあるが、何より痕跡から歴史を辿っていくのがいい。ひとつのテーマを掘り下げてその時代背景を現地で追っていくんだな。こうした時間軸の旅は実は音楽を聴く時も同様で、実は自分はこうした世相を音楽を通して見ていくのが好きなんだな、と実感してしまった。ということで今回はキンクスだ。

年末間際の中古屋は掘り出し物が溢れているが、キンクスもバーズも沢山在庫があった。矢野顕子もね。そこで見つけたのがキンクス史上最も地味といわれる71年作のサントラだ。ただどうしてどうしてなかなかこれがいい。そもそも『ローラ』と『マスウェル・ヒルビリーズ』の間にあるわけだから悪いはずがないと思っていたが予想は的中した。サントラなのでインストも半分くらいあるが、演奏がタイトなのでなかなかこれが聴ける代物となっている。いいじゃんパーシー。映画は別に観る気はないけど。

先日のビートクラブでも異常な眼光でカメラを見据えていたレイ・デイヴィスが演奏していたのは『マスウェル・ヒルビリーズ』だったが、カントリー要素たっぶりの渋くかつひねくれた絶妙の旋律をもつ曲たちがここでも披露されている。中だるみ等があるかと思ったが全編に渡ってクオリティは持続した。なかなかええね!しかし映画の内容がペニスの移植みたいなふざけた話で内容も超B級という謎の作品で、何故にキンクスが・・と疑問も湧きそうなもんだが、その辺りは解説で詳説されているので省略しよう。要するにデイヴ・デイヴィスの姿を投影してレイ・デイヴィスが内容に爆笑したのがきっかけのようだ。パイ時期ラストの作品であり思いっ切り過渡期ではあるが演奏は粘っこくて良い。ちょっとボーナストラックの音が悪いのが玉に傷かな。

キンクスは今デラックス・エディションでまたまた再発が続いているが、高いのともういいよ、という位の再発なので、決定盤とおもいつつも手が出ないでいる。ただそれによって中古市場は潤っていて、これでキンクスの未聴は初期と後期を残すのみとなった。一時期不退転の決意でプラケース盤は売り払ってしまったので、また少しずつ集めていこう。次は『Face to Face』あたりかな。