ムーンライダーズ『火の玉ボーイコンサート』Disc 1

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ムーンライダーズではなくムーンライダー「ス」の1stアルバム発売35周年を記念して開かれたコンサートの完全収録盤。てっきりDVDで出ると思っていたのでCDだけなのは意外だったが、それでも完全収録で出してくれるところは相変わらずサービス満点。演奏が重層的で非常に逞しい。

感覚的にはちみつぱいの再結成コンサートのような趣で、ライダーズのコンサートよりも当然プレミアム感が漂う。元々会社の人と行こうかと思っていたがお断りされてしまったため断念したところに震災。開催が延期となって昨年5月に改めて開催されたもの。ライダーズの活動休止には様々な真実(事実ではなく)が飛び交うが、やはりきっかけはこのコンサートなんじゃないだろうか。

要するに35年もやっているとこの後何周年、何周年というのが永遠に続く訳で、ロックンローラーはそれを良しとしないだろう。段々博物館扱いされていくことに端的に嫌気がさしたんじゃないかなと思う。何かやるだけで「伝説的」とか言われて現在進行形のバンドとして耐えられない。イベント興行で食っていくにはそれが王道なんだろうが、そのためにバンドをやってる訳じゃないだろうから、続けることで疲れてしまう。体力的な問題もあろうし、ファンとの繋がりも後ろ髪をひかれはしたろうが、「もういいかな」と直感的に感じたように思う。まあこいつも想像の産物だが。

いずれにしろ演奏がうまくて、こちらこそがザ・バンドの『ラスト・ワルツ』のよう。オリジナルを手にしたのが大分後になってからなのでコンサートに行くかどうか迷っている時もその思い入れの度合と懐具合で判断してしまった経緯がある。ああ、金さえあればの40代。

『ウェディング・ソング』であがた森魚がゲスト・ボーカルとして出てくるのが嬉しい。矢野顕子矢野誠もいる。確か昨年は矢野誠も埼玉で色々と活動していたよな。何といってもやはり『スカンピン』が圧巻でアレンジが重い。徳武弘文の参加がいいカンフル剤となっている。冒頭から飛ばす東京中低域も音に奥行きを与えていて豪華だ。

あがた森魚の最後の演説もいいねえ。