フランク・ザッパ&ザ・マザーズ『Roxy The Movie』

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遂に出た!ロキシーの映像版。長らく映像化が予告されながら、延期されていた作品が遂に42年の時を経てリリースされました。非常に目出たい!

撮影時のトラブルの影響で音と映像が合わず、作品化には膨大なコストがかかるとされていて、音源のみのリリースに留まっていたライブ映像が遂に作品化されました。ライブ作品としては74年に『Roxy & Elsewhere』が出ていますし、映像化の資金集めのためと銘打った別バージョンのライブ作品『Roxy By Proxy』も出ていますが、やはり映像は決定盤です。映像化によってやはり様々な発見がありました。

とにかく『Roxy & Elsewhere』の演奏は大好きでしたし、この時期の粘り気のある、かつ超絶プレイ満載な音は耳に残って離れないので嬉しい限りですが、晩年のライブ集大成である『You Can't Do That On Stage Anymore』シリーズでやはり大好きだったVol.1の「I'm The Slime」「Big Swifty」のメドレーやVol.3の「Dickie's Such An Asshole」さえもが収録されているのはひっくり返りそうになりました。そうか、これもロキシーだったんだよな・・。やはりこの時期の演奏は格別です。

ジョージ・デュークの演奏がとにかくカッコよくて、恍惚の表情を浮かべながら軽々と猛烈な演奏をする姿が拝めるだけでも満足ですが、やはり本質はリズム、パーカッションにあるなあ、と実感しました。ルース・アンダーウッドのマリンバ、パーカッションとラルフ・ハンフリー、チェスター・トンプソンのツイン・ドラムが織りなすめくるめくリズムの応酬は必見もので、この構造が底辺でこの時期の音を支えていた。

かつ発見だったのは細かいパーカッションはラルフ・ハンフリーが演奏していた、ということ。てっきりルースの演奏だと思っていました。また、手数の多いドラムのフレーズはチェスター・トンプソンかと思っていましたが、これもほぼほぼラルフの演奏だったというのは意外でした。凄い人だったんですね。

「Big Swifty」の目眩がしそうな恍惚の演奏の間にザッパはひと休みして煙草を吸ったり顔を拭いてもらったりしながら椅子に座っていたなんて、あの超絶演奏の音からはとても想像できない映像です。

とにかく音の方が先に耳に染み付いているので、後から演奏を見ると意外なことの連続でした。また、客をステージに上げて何をやらせていたのか、『Roxy & Elsewhere』のジャケットにあったダンサーみたいな人と一緒にステージ上では何が起こっていたのか、ここへ来てやっと判明した訳で、どう考えても音だけでは想像できない世界が繰り広げられています。

仮にその演出がなくても充分に見応えがありますし、圧倒される瞬間の連続です。もっと早くに出ていたら、また評価も変わったんだろうなあ、としみじみ思いを馳せることもできる作品です。