XTC『Mummer』

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ここからしばらくXTCの聴き直しに入ります。まずは83年リリースの6作目。

 

この作品は自分がXTCをリアルタイムで聴き始めた頃のアルバムなので非常に思い入れも深い。結構地味な作品と言われていますし、この頃からXTCはライブ活動をやめてしまったので、かつてのパンク然とした勢いは失われつつあった。ライブ活動を行わなくなったことでドラムのテリー・チェンバースはこのアルバムの録音中に脱退してしまいます。

 

そんなネガティブな話題を吹っ飛ばすくらいの楽曲のクオリティがこの作品にはある、そう確信しています。当時は坂本龍一サウンドストリートでこのアルバムのリードトラック「Wonderland」をよくかけていました。高橋幸宏はイギリスにソロアルバムを録音しに行った際に、XTCのアコースティックへの音の変化を時代の次の潮流として語っていた。XTCは当時からミュージシャンズ・ミュージシャンだった訳です。

 

前作が『イングリッシュ・セトゥルメント』ですので、曲作りは絶好調。特にやっぱりアンディ・パートリッジが神がかっていますね。

 

XTCの音楽の中では比較的例外にあたるジャジーな雰囲気の「Ladybird」という曲が収録されているんですが、これが素晴らしい。もうこれ以上ないでしょ、というくらい洗練された静かで複雑で綺麗な曲で、当時のアンディの好調さを裏付けていると思います。

 

このアルバムはボーナストラックも凄くて、これを聴くために自分はCDプレーヤーを購入したほどです。具体的には「Jump」「Toys」「Desert Island」、この3曲を掘り当てた時には狂喜乱舞しました。こんなクオリティの楽曲をアルバムに入れないなんて信じられない。XTCはだから凄いんです。

 

アコースティックな音に振り切った作品ですが、傾向は前作からあった。白井良明のいうアコギのオーケストレーションですね。その片鱗はこのアルバムにもありますが、何かもっとオーガニックな魅力がここでは増している。表舞台から退いて本当に素敵なことだけを突き詰めた結果、スティーヴ・ナイのプロデュースと相まって孤高の作品を作り上げた。そんな感じかな。