マイルス・デイヴィス『Miles Electric : A Different Kind of Blue』


今週はラジオでジャズ・マイルスが放送されていました。その中で作家の平野啓一郎さんが小川隆夫さんの「マイルスの歴代のサックス・プレーヤーで3人選ぶとしたら」という質問に、コルトレーンウェイン・ショーターに加えてゲイリー・バーツを選んでいて、その理由に挙げていたのが70年のワイト島フェスティバルの演奏でした。

 

曲名を聞かれて「Call It Anything」とマイルスが答えたものがそのまま曲名となったエピソードは有名でしたので自分も知ってはいましたが、映像はきちんと観ていませんでした。番組でかかった演奏は「Spanish Key」のパートでしたが、元々この曲は大好きな曲でしたので、そのグルーヴに一発で耳が引っかかりました。ということで検索するとこのDVDが出てきて、結構な値段だったので諦めかけていたらメルカリで見つけた、という次第です。便利な世の中になりました。

 

ワイト島の演奏がフルで収録されていてとても見応えがあります。メンバーは下記の通り。

マイルス・デイヴィス(tp)

キース・ジャレット(org)

チック・コリア(p)

ジャック・ディジョネット(ds)

ゲイリー・バーツ(sax)

デイヴ・ホランド(b)

アイアート・モレイラ(per)

 

一見して思い出したのは『太陽と戦慄』の頃のキング・クリムゾンです。やはりパーカッションの印象が強い。とても楽しそうに演奏しています。ワイト島の観客は基本的にはロック・リスナーなので、マイルスの演奏はおそらくはプログレの一種として耳に届いていたんだと思います。もちろん映像にも出てくるサンタナの音楽にも共通点があるし、ラジオでSUGIZOさんがコメントしていたフランク・ザッパにも近い。自分もザッパからエレクトリック・マイルスに接近したようなところがあります。

 

それにしても当時の演奏メンバー全員にインタビューをとったのは凄い。2003年時点での映像ですが、当時のことを語る語り口はとても愛情に溢れていて生々しい。加えてハービー・ハンコックジョニ・ミッチェルのインタビュー映像も出てきます。なかなか見応えがありますね。

 

ジャック・ディジョネットをはじめ複数のミュージシャンがマイルスのモノマネをするのも可笑しい。特徴的で印象が強烈なんでしょう。エレクトリック・マイルスはジャック・ディジョネットのドラムにまずは惹かれましたが、なかなかやっぱりエレピの音もいいですね。キース・ジャレットは呻き声の印象しかありませんでしたが、ワイト島での演奏で首を回しながら恍惚感あふれる姿を見ていると、なかなか微笑ましい。一方のチック・コリアは悩める受験生のようです。

 

演奏中マイルスが右の人差し指をこめかみに当てる瞬間があって、この仕草が複数の時代の演奏シーンで見られます。これ、カッコいいですね。