ムッシュかまやつ『Je m'appelle MONSIEUR ー我が名はムッシュ』


02年にリリースされたかまやつひろしのベスト盤。プロデュースは小西康陽。この作品の存在は知っていましたが、聴いてみるとこれはベスト盤というよりはムッシュを題材にした小西康陽の作品ですね。形を変えたピチカート・ファイヴ。ライナーでミッキー・カーチスもコメントしていますが、ムッシュかまやつのドキュメンタリー作品のようです。非常に映像的。

 

楽曲は新たに演奏されたもので、時折ご本人のインタビューも入る。堺正章のコメントも入って来たりします。楽曲とコメントはノンストップで繋げられていて、一気に聴くことができます。この辺りの作品作りは小西康陽の手腕が思い切り発揮されていて、今聴いても痛快です。そして記録としても貴重なものとなっています。

 

音楽を映画のように作る。そして生ける伝説をパッケージ化する。この編集的な手法でピチカート・ファイヴは90年代を駆け抜けましたが、その残り香が見え隠れする作品でした。それは決して嫌味ではなくて、相手に対する敬意が感じられます。加えて演奏も洒落ていてとてもカッコいい。ムッシュかまやつという人は生涯洒落たスタンスを貫いた人で、ある意味高橋幸宏なんかにも近い。そして根底に音楽を探究する姿勢がある。だから聴いていて爽快なんですね。そんな印象を受けました。聴いて幸せになることができる作品です。