プリファブ・スプラウト『Let's Change The World With Music』

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まさか出るとは思わなかったプリファブ・スプラウトの新作。とはいっても90年に出た『ヨルダン・ザ・カムバック』の次にリリースが予定されていたお蔵入りアルバムの復活、ということだから厳密には新作とは言い難いが、それでもいい。何故かというと鉄壁だから。ほとんど捨て曲なしの素晴らしいアルバムだと思います。

パディ・マクアルーンのセルフ・ライナーノーツによると、ビーチボーイズの『スマイル』に触発されて制作されたとのことだが、曲というよりその伝説に影響を受けたようだ。漏れ伝わってくる実験性と美しさの同居。『スマイル』もお蔵入りアルバムだが、その事実の模倣ではなく、その姿勢と垣間見られる音像に触発されたようだ。内容は『スマイル』に似ている訳ではないが、美しいメロディをかくという意味ではブライアン・ウィルソンと共通する意志を感じる。

音の方はさすがに90年代の音ということもあり、打ち込み主体の高水準デモテープといった趣もよぎるが、何つっても曲がいいのでその辺りは吹き飛んでしまう。元々はトーマス・ドルビーにプロデュースを依頼していたというから、当時リリースされたらさぞかし凄いアルバムになっていただろう。

 

実は『ヨルダン・ザ・カムバック』での大作主義に一度は意識が離れて次作の『アンドロメダ・ハイツ』は聴いていなかったんだけど、これは聴くべきだな。07年に『スティーヴ・マックイーン』のデラックス・エディションが出て、そこでのパディ・マクアルーンの弾き語りセルフカバーが余りに素晴らしかったので、新作が出ると聞いてその辺りを期待してみたが、今回のリリースはいい意味で裏切られた。こりゃあいいですわ。

プリファブ・スプラウトはポッパーズMTVでこの曲を見てから好きになったが、その頃のキラキラした感覚が漂っているこの新作は「出してくれてありがとう」といった傑作だと思います。

 


Prefab Sprout - Cars and Girls (Official Video)