小坂忠『Chu's Garden』『ありがとう』

f:id:tyunne:20181025211737j:plain

09年に出た小坂忠のボックスセットはずっと気にかけていたんですが、なにせ高いので手にすることはなかば諦めていました。そこに中古で比較的手頃な値段で発見。例によってここで手にしなければ10年後悔すると思って思い切って手にとりました。今日から夏休みなので、ご褒美感覚ということで・・と色々理由をつけないと買えないですね、こうした作品は。

全作品紙ジャケでつくりもしっかりしています。小坂忠細野晴臣のインタビューもあって、未発表のライブや映像も収録ということで内容は充実極まりない。そんな中で最初は71年リリースの1stです。この作品『ありがとう』はこちらも中古の掘り出し物で入手済みですが、ボックスでは『どろんこまつり』がカットされているのが少し残念です。でもそれを差し置いても音が非常にいいですね。ドラムもベースも生々しい。楽器の音がクリアで前に出て来ているように感じました。

タイトル曲は細野晴臣のソロといっても差し支えないような楽曲で、比較的色んなタイトルで耳にすることが出来る作品ですが、全体的に感じるのは『HOSONO HOUSE』や後期はっぴいえんどとの共通点です。よく調べてみると71年10月リリースで、『風街ろまん』の1ヶ月前なんですね。『HOSONO HOUSE』が73年なので随分と前に出ていたんだなあ、と今回認識を新たにしました。完全にその後のティン・パン・アレイ時代を予感させる内容で、こうした一見内省的で実はグルーヴィーという雰囲気はその時代のなせる技、かつ時代を超えるクオリティを併せ持つ内容です。そこに音質向上と来たら文句のつけようがないですね。日本のシティ・ポップスの出発点がここにしっかりと刻まれています。カントリー・テイストなんですが、それが時代の空気になっていた。狭山や福生の時代ですね。この頃は米軍基地周辺の郊外からメッセージが発信されていた。

これまで部分的にしか体験できていなかった小坂忠の世界をまとめて味わえるのは、この夏の贅沢です。さて、この後どんな感じで時代が繋がっていくんだろう。ミッシング・リンクを探っていこうと思います。