キリンジ『SUPER VIEW』

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キリンジの新作が出ました。弟の脱退宣言が出た直後の作品とあって注目度も高いですが、正直自分はここ最近のキリンジの音楽性には多少の疑問も感じていたのも事実。少しスタンダード過ぎて捻りが足りないような気がするんです。そのため今回も少し購入をためらいました。

しかし、冒頭の『早春』はよかった。冨田恵一がストリングス・アレンジを施しているのもありますが、こうした壮大な曲を冒頭に持ってくるというセンスと端的に楽曲の良さ、その展開に唸らされました。やっぱり兄貴は凄いなあ。これでは一人になっても期待できますね。

もうひとつ感じたのは音圧の低さ。これは別のところでも書いていますが、ビートルズの衝撃のリマスター以降、音圧の低さはひとつの基準になったような感があります。それが普通に新作で行われていることに時代とのリンクを感じます。音で言うと意外とウォール・オブ・サウンド然としているところがあって、音圧の低さと相俟ってフィル・スペクターへのオマージュを感じます。リード・シングルの『TREKKING SONG』にもそれは感じました。やはりラジオだけでは分からない要素がきちんと聴くとありますね。

つくづく後悔しているのは震災後のチャリティ・ソング『あたらしいともだち』をDLしなかったこと。てっきり新作に入るとばかり思っていたのでこいつは迂闊でした。『祈れ呪うな』の歌詞の攻撃性も兄貴らしくていいですね。初期の頃のトンガリ具合を思い出します。