会社に細野晴臣みたいな人がいて、これが様々なプロジェクトを立ち上げては次、と繰り返すんですね。天才肌なんだけど、信用してついて行くともうそこにはいなかったりする。結果的にマネジメントとしては成功しない訳ですが、アウトプットの質にはこだわる。大滝詠一や坂本龍一が細野晴臣に対して抱いていた感情は恐らくそんなところだろうと推測します。
本作ははっぴいえんどのラスト作。既にバンドとしては終わっていて、ソロ作品の寄せ集めのようにも映りますが、ホワイトアルバムがそうだったように、この作品もバンド成熟期の魅力が詰まった素晴らしい出来に仕上がっています。
極めつけにヴァン・ダイク・パークスにプロデュースを委ねた「さよならアメリカ、さよならニッポン」。既にアメリカにも日本にも自らの手本はないと宣言した楽曲ですが、一見ギョッとするような不思議なリフレインが続く実は左程ポピュラーな曲ではないところがポイントです。ここには精神性を見るべきで楽曲的には大滝や細野のそれぞれの作品を味わうのが真っ当ではないかと。
収録時間が30分足らずという強烈な凝縮度を持った作品でもあります。