KIRINJI『時間がない』

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キリンジのニューシングルはコトリンゴ脱退後初めての新作となります。但し、コトリンゴ在籍時最後のライブ音源を8曲もボーナストラックで収録していて、トータル収録時間は何と42分。キリンジはよくこういったことをやってくれますが、最早シングルのボリュームではないですよね。豪華な仕様です。

新曲の方はタイトルの『時間がない』という内容に同世代として激しく同意するものがあります。すでに死へ向かって残りの時間をカウントダウンする考え方は鈴木博文の『後がない』でも見受けられましたし、鈴木慶一が最近のコメントで「人生残り10年とすると1年はその10%にあたる」などと発言していたことからも、残された時間で何をするのか、という課題に直面していく思考を表現していて、とても共感を覚えます。

そこで焦って色々やるのではなく、選んで物事を行っていく。恐らくそういったことが大事なんだろうと思います。何しろ体が言うことを聞かなくなりますので。大切にこの一瞬一瞬を過ごしていくこと。それは難しくて大事なお話ですね。

ライブ音源の方はやはりコトリンゴの声にどうしても耳が行ってしまいますが、コトリンゴが抜けてしまうことで器楽的要素がどうしても減ってしまい、新生キリンジにあったプログレ的な要素やブリティッシュフォーク的な感覚が抜け落ちて行ってしまうように思えてなりません。それまでのキリンジになかった楽器演奏の化学反応的な展開、永遠に続くかのようなピアノソロなどが聴けなくなってしまうことはとても残念ですが、これはしかし初期のロキシー・ミュージックブライアン・イーノがいたのと同様に、これまでが豪華過ぎた、と考えるのが妥当なんじゃないかと思います。残念ですが仕方がない。今後の展開に期待するとしましょう。