4年ぶりにオリジナル・ラブの新作がリリースされました。ここ数年の田島貴男の好調ぶりを反映したとても良い作品です。前作の『ラヴァーマン』でも90年代の『風の歌を聴け』あたりへの回帰が感じられましたが、今回もやはりその辺りが楽しみでした。結果としてはそれだけではない総合力が表現されていると思います。
楽曲の大まかな傾向は現行バンドメンバーによる録音、90年代メンバー参加の楽曲、単独打ち込み系の3種類に分かれますが、やはり何と言ってもベース小松秀行、ドラム佐野康夫の『風の歌を聴け』コンビの参加曲に止めを刺すと思います。4曲目の『グッディガール feat. PUNPEE」から始まるんですが、やはりグルーヴが違うし、全盛期の粘り気のようなものが腰に来る。そのグルーヴは7曲目の渡辺香津美が参加した「空気・抵抗」でピークに達します。
かといって90年代の頃の熱気がそのまま表出されているような音楽とも違います。もう少し落ち着いているんですね。このいい意味で抑制されたグルーヴ、熱量の表現から想起したのはスティーリー・ダンでした。あそこまで究極に完璧主義に徹しているという意味ではなく、楽曲に込める魂をきちんとプロデュースしている感覚。沸騰をそのまま押し出すのではなくて、それらをパッケージして見せる。その冷静さが円熟の魅力になっていると思います。
これはきっと、ひとりソウルショウなどで培った自らを演者と演出者として同時並行で進めていく多重的な感覚。それが自然と研ぎ澄まされてバンド演奏の際にも発揮されているのではないかと推測します。非常に高度ですね。