YMOの場合、というより皆そうかもしれませんが、各時期のライブは直近の作品の音に引っ張られることが多くて、結果的にアルバム再現ライブになってしまう。この散会ライブは結局は『浮気なぼくら』ツアーみたいなもので、この当時の音でキャリアの楽曲を再現したらこのようになりました、という以外の何物でもないように思います。
この2年前のウィンターライブ は『BGM』『テクノデリック』の再現、この10年後の再生ライブは『テクノドン』の再現、さらに再々結成のパシフィコ横浜はスケッチショウの再現、という風な趣。と考えれば、音が歌謡調で覆われてしまうのは仕方ありません。『浮気なぼくら』ツアーなので。
本作は「ああ、この時期こんな音だったな」と思い出すためにあるようなアルバムで、解散ドキュメントではない。ですので、映画の『プロパガンダ』も意味合いを装飾するのにとても苦心して、結果ああした虚飾になってしまった。
YMOの活動ドキュメンタリーはいまだに作られていないと思います。ビートルズでいう『アンソロジー』が制作されてもいいはずですが、まだメンバーに現役感がある現在では、それは難しいのかもしれません。