フランク・ザッパ『1970s Broadcast Collection』disc 5

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5枚目は75年のステージの続きです。ここでは70年代のザッパ・バンドにおけるボーカルについてちょっと考えました。

 

70年代初頭のバンドに元タートルズの二人、マーク・ヴォルマンとハワード・ケイラン、すなわちフロ&エディを招いたことで、ザッパのバンドのボーカル・パートが非常に演劇的になりました。このイメージがその後のザッパの音楽のボーカル入りの楽曲における基準になったのではないでしょうか。

 

その後にボーカル・パートを担当するのは本盤にも参加しているナポレオン・マーフィー・ブロックなんですが、そのコミカルなスタイルはある一定の割合でフロ&エディの要素を引き継いでいる。そして、70年代後期に演奏される楽曲の初期バージョンがナポレオン・マーフィー・ブロックのボーカルを意識して書かれたものだとすれば、そのキャラクターを生かした楽曲作りは実は一貫していることになります。

 

ザッパのボーカル楽曲というのは80年代に前面化していて、その辺りの要素は実はずっと抵抗があったんですが、今になって80年代のザッパを聴き返してみると、結構軽薄な印象は薄れていく感覚がありました。数ある要素の中でボーカルの占める割合はごく一部ですが、それでも70年代初頭の強烈なインパクトがあったからこそ、その後の楽曲の一形態を担うことができた。そんなことを思いながら聴いていました。