フランク・ザッパ『ZAPPA』


2020年に公開されたザッパの生涯を綴った映画がパッケージでリリースされました。映画は観に行けなかったので初見になります。とてもいい作品でした。

 

基本的には時系列に沿ってザッパの生涯が描かれていますが、何といっても出発点が興味深い。ザッパは音楽なんかには元々興味がなくて、むしろ幼少期は化学に興味があった。爆発物などを作っていたそうです。

 

その後、誰からも支持されない音楽という触れ込みで地元のレコード店に紹介されていたヴァレーズの音楽を聴いて初めて音楽に興味を持った。もうスタート地点が現代音楽な訳で、ポップ・ミュージックやR&Bではない。そして、ヴァレーズの音楽の打楽器的側面に反応して最初はドラムのスティックを手にする訳です。

 

結果的に表現される音楽は勿論現代音楽的な要素も多く含むし、非常に複雑になっていく。ザッパはあくまで自分の頭の中にある音楽を形にして、それを自分が聴きたいだけであって、その音楽を他にも聴きたい人がいるなら尚よし、みたいな人だった。なのでとてもワーカホリックで、あくまで作品が第一優先。この辺りは庵野秀明と一緒ですね。

 

様々な演奏シーンが部分的に挿入されますが、中でも度肝を抜くのはヴィニー・カリュータの演奏です。なかなか演奏シーンが出てこない人なので、一瞬でも観れたのは嬉しかった。驚異的なテクニックです。

 

チェコ・スロヴァキアの独立の際に自由の象徴として国に招待されたシーンはやはり感動的ですし、亡くなっていく直前の映像も非常に哀しげで何とも言えないものがありますが、そこはルース・アンダーウッドの涙で全ては語られていきます。数少ないザッパの人間性に触れた人物として、その発言は貴重です。