ムーンライダーズの新譜が出ました。インプロのアルバムという触れ込みでしたので、どんな感じになっているかワクワクして聴きましたが、ある程度想定通りとはいえやっぱりこれを今出すのは凄い。
前作が11年ぶりの復活作で、その最後の曲「私は愚民」で後半パートにインプロヴィゼーションをやっていたので雰囲気はなんとなく予想はつきました。最初にその曲を聴いた時は衝撃的でしたが、その後のライブで幕が降りてからも即興演奏をずっと楽しそうに続けている映像を配信で観ましたので「ああ、これは楽しそうにやってるなあ」と思っていました。ですのでこの展開は宜なるかな、という感じです。
それにしたってこの音楽は更にムーンライダーズというバンドの敷居を自ら高くしてしまっている気がします。これは文脈なしには聴くのは難しいでしょう。でもそれでいいんです。加えてこの作品が岡田徹の遺作となってしまった。甚だ不謹慎な言い方ですが、それが痛快ですよね。こんな風に攻めて幕を引くなんて何とカッコいいことか。
音の感触はジャズというよりはキング・クリムゾンやカンのような感じ。楽器構成がロック・バンドなのでプログレ寄りになる訳ですが、聴いてて怖い、というよりどこか温かみがあるのは何故なんだろう。音に年輪が刻み込まれているのかな。