大貫妙子&坂本龍一『UTAU』

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ピアノとボーカルのみで綴った綺麗な新作。既存曲に歌詞をつけたものを中心に過去の曲も含めて歌われる世界観は孤高のもの。

『koko』に歌詞をつけた『3びきのくま』や童謡の『赤とんぼ』なんかが意外によかったが、大貫妙子自身も楽しんだという新曲『a life』が80年代風でいい。「もう1曲やっておけばよかった」と言うくらい好きなようだが、確かにこの感じは懐かしいですね。

『美貌の青空』なんかはまるでこちらがオリジナルのようだが、坂本龍一のボーカルと比べるのも変な話。ただ圧倒的な透明感とある種の緊張感が張りつめている。12/11にWOWWOWで放送されるライブも楽しみだ。それにしても「坂本さんは歌詞をまったく聴いていない」というコメントは可笑しい。器楽なんだよなあ。「自分も歌っているけど坂本さんのピアノも歌っている」ということでの『UTAU』(うたう)アルバム。ある種の郷愁が漂うのが今回のポイントのように思う。

フルアートワーク版は2枚組で、2枚目が坂本のピアノのみ。これまでの音とはミックスを変えているそうで、質感が若干異なっていて生々しい。というよりノスタルジックな感じかな。記憶の中にある学校みたいなイメージ。ヒリヒリしていなくて温かみを感じる。『koko』が正式にアルバムに収録されたのは嬉しい限りだ。

制作過程をコラージュした『Geimori』も面白い。最初は何かと思ったが、雰囲気が伝わってくるようで微笑ましいトラックだ。『ファイアークラッカー』まで飛び出す。まるで映画のエンドロールのよう。