デヴィッド・ボウイ『Heroes』

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ベルリン録音2作目。最近出た新作はこのアルバムのジャケットをパロディ化したものですが、現在、またこの頃の感触を何らかの形で提示しようとしているのでしょうか。それは一体何故なんでしょう。今月号のレコード・コレクターズはベルリン三部作を取り上げているようですので、その内じっくりと読んでみようと思います。

ロバート・フリップも新たに参加してバンド色が強くなった前半部分は確かにまとまりがいい。但し、『ロウ』のような革新性はやはり感じません。ここでパンク・ムーヴメントに対応しようとしていたのだとすれば、それもまた弱い気がします。タイトル曲の『ヒーローズ』にも左程のインパクトはないような・・。ただ、これはもう少し味わわないと分からないですね。むしろ次の曲の『沈黙の時代の子供たち』の方が粘っこくてボウイらしく聴こえます。

クラフトワークに捧げたという『V-2シュナイダー』は良くも悪くもポップスフィールドからの回答、という感じがして微笑ましい。これはやっぱりテクノに宿る身体性、無機質が故のフィジカルなファンクネスがロック系の音楽には不足しているという証なんじゃないかと思います。その後に続くインストの数々も実験的なんだけどどこか枠に納まっているような気がしてのめり込むには少し不足感があるかなあ。

と色々と書いていますが決して悪くない作品で、いい意味でのボウイの曖昧さがここでもきっちり見て取れます。このベルリン録音シリーズはデヴィッド・ボウイのファンからすると面食らったんだろうなあ。突然変異的ですもんね。でも決して分断はなく、綿々と繋がっている印象も受けています。