ムーンライダーズ『The Worst of MOONRIDERS』

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86年という年はムーンライダーズにとって記念すべき10周年の年であったと同時に活動のピークを極めた時期でもあります。とにかく強烈な仕事量ですが、その中でもこの過去のライブのアーカイヴは特異な作品でした。はっきり言って後追い型の自分にとっては余り馴染みのない楽曲ばかりで当時は左程楽しめなかった記憶がありますが、今となってはこれがいかに凄いものであったかが分かる。活動当初からフォローしていた人にとってはまさにこの年は夢のような一年であったことでしょう。

とはいえ冒頭の「こうもりが飛ぶ頃」は何とも言えない魅力を感じました。今でもこの曲は非常に印象に残っていて、何度も繰り返し聴いた覚えがあります。これと『The Worst Visualizer』で観た「塀の上で」の衝撃ははちみつぱいの楽曲を振り返るのに絶好の機会を与えてくれました。ただ「こうもりが飛ぶ頃」は当時作品化はされていなくて、はちみつぱいのボックスが出るまで待つことにはなりますが・・。

86年には初の12インチシングルということで『夏の日のオーガズム』も発売されますが、ここでのライブ演奏は過去の膨大なライブ音源を編集して再現した特異なもので、これが先日聴いたゴドリー&クリームの『History Mix Vol.1』に倣ったものであることは今回初めて知りました。それにしたって人力でここまで再現するのは凄まじい。勿論テープは使っていますが、ドラムは生ですから。同じ手法は奥田民生も「人ばっか」で再現していますね。

今回の再発での目玉は86年の高橋幸宏の『Stay Close』コンサートの音源です。これが素晴らしい。「モダン・ラヴァーズ」や「くれない埠頭」もいいですが、何といっても「今すぐ君をぶっとばせ」でしょう。この曲は活動休止時のルーフトップでも演奏されますが、やはり当時の脂の乗り切った演奏で聴くのはまた格別です。ここへ来てもまだ蔵出し音源があるなんて何ということだ。

2枚組で双方とも70分越えという物凄いボリュームで迫ってくる作品。これは聴くのにパワーが要ります。