高野寛『City Folkiore』

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まず最初にサブスクの話から始めてみようと思います。先日Apple Musicを始めたので、大抵の新作はそちらで全て聴くことができます。だとするとCDを購入するということはどういうことなのか。やっぱり単価は高いし、ただ聴くだけならそこまでのものはいらない。でもこの作品もちゃんと購入しました。

 

日本ではサブスクの割合が15%くらいとまだ少なくて、欧米では7割を越えると言われています。そうした環境下で海外のアーティストの作品は特に旧作に顕著なデラックス・エディション化、過剰なボックス仕様で高単価を狙っています。パッケージ作品を買うということは相当な付加価値をつけるということと同義だということです。

 

日本ではまだそこまでの変化はありませんが、ある程度ジャケットの特殊仕様やボーナストラック等で差別化を図っているようにも見受けられます。ただ、やっぱりそれでもこのCD不況の流れは止められない。自分の場合はただ作品に向き合うこと、その密度がサブスクでは足りないので、どうしてもパッケージの方を最終的には選んでしまう。ただ、膨大な試聴機としてサブスクが活用できるので、事前の検討は慎重になったと思います。

 

前置きが長くなりましたが、本作は事前に聴いていてとても良い作品だったので、やっと手にしたという感じです。昔なら文句なしに入手していたのが、少し間を置いて楽しむことになりました。ボーナストラックは7曲も入っていて楽しい。

 

今回アレンジの全てを冨田恵一に委ねていますが、こうしたがっぷり四つのアレンジャーとのタッグはトッド・ラングレンとの諸作を想起させます。冨田ラボの音像へのコミット具合は昨今の細野晴臣の音に対する変化の兆しをキャッチする活動とリンクしていて、良いところに目を付けるなあ、と感じました。KIRINJIの新作なんかもそうでしたね。今の音にきっちりと対応している作品です。

 

楽曲はどれも粒揃いで、そこがまずは基本。「停留所まで」なんてかなりいい曲ですよね。この基盤があってはじめて音への興味が向かう。それが多層的な音楽の楽しみだと思います。2019年をここで象徴する作品の一翼を担うことになりました。