ラスト。今度書籍も出るゲット・バック・セッション関連の音源、すなわち『Let It Be』関連のデモとラスト・アルバム『Abbey Road』関連の音源を集めたものですが、ここでのデモやセッションの音源はどうしても解散へ向かう悲しいエピソードがイメージとして先行してしまいます。
例えば政局の報道が過熱して肝心の政策内容に焦点がなかなか当たらないように、ビートルズの後期も解散劇や人間関係といったエピソードにばかり焦点が当たってしまって、肝心の音楽に議論が及ばない。実際そうしたイメージで自分も『Let It Be』は良くないアルバムといった固定観念が強く与えられてしまって、きちんと聴くのは随分後になってからでした。
でも、『Let It Be』という作品は楽曲は結構良くて、冒頭の「Two of Us」からして最高だと思います。続く「Dig A Pony」も好きですね。意外と演奏がラフなところも含めてなかなかいいアルバムで、最初にきちんと向き合った時は長らく聴かなかったことを後悔しました。
そういった意味で、後期の音源はこと音楽に限っていえば成熟の極地にあって、一度音楽を奏でてしまえば雑念は吹っ飛んでしまってグルーヴや演奏する楽しさが前面に出てくる。音楽家というのはそういうもんです。ここでの音源もそんな感じで楽しめば良いと思います。
ジョージ・ハリスンのその後のソロ・アルバムの表題曲となる「All Things Must Pass」のデモ音源があったり、後にバッドフィンガーに提供するポール・マッカートニーの作による「Come And Get It」が入っていたりと興味は尽きないんですが、これでもうお終い。
この『Anthology 3』が96年の発売で、その後『Let It Be Naked』が出るのが03年ですので、少なくとも『Let It Be』については初期バージョンが正式に世に出ている。後は映像ですね。出る出ると言われて久しいですが、そろそろ機も熟したかなと思います。