キンクス『Everybody's In Show-Biz (Legacy Edition)』

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やっと聴けたキンクスの72年リリース作の再発盤。版権がソニーに移って以降、『ローラVSパワーマン』に続いてのレガシーエディションです。

ボーナスディスクに収録されているのは同時期のライブ音源が中心。実際オリジナルもスタジオ録音盤とライブの2枚組でしたが、ライブトラックが多くなったことで作品としてライブアルバムのようになっています。しかしながら、それが逆に本作の印象を薄めてしまっている感があって、実際の肝はやはりスタジオ録音の楽曲にあると思います。

セルロイド・ヒーローズ」という屈指のバラードが収められているのは言うまでもなく、他の楽曲も次作の『プリザヴェイション』のくどさに至る一歩手前のコクのあるうねりがパッケージされていて、完成度はひたすら高い。『アーサー』や『ローラ』のような沸点に達した勢い程はないものの、前作の『マスウェル・ヒルビリーズ』で実践したカントリー風味とキャバレー音楽のブレンドのような世界観がより成熟してきている。

元々はツアーの映像を映画化して、そのサウンドトラックとして本作をリリースする計画だったようですが、映画化は予算が出ずに頓挫して、結果としてライブとの2枚組と相成った数奇な作品です。しかしスタジオ録音盤として単独でリリースした方が印象は強かったんじゃないかと思います。地味かもしれませんが、後世に残る作品としての色合いが強まったんじゃないかな。ボリュームがあると個々が埋もれてしまいますので。

ですので、聴く度に「これは意外といい作品だったんだな」と思わせる不思議な作品となっています。その印象は今回聴き直しても変わりませんでした。いずれにせよ、究極の再発としてリリースを歓迎します。